和歌山電鐵
社長 小嶋光信
南海電鉄時代には5億円もの赤字で営業廃止となった貴志川線を、両備グループが提唱する「公設民営」の手法をベースに両備型のコスト削減ノウハウを駆使して82百万円の運行補助金で10年間運営するという奇跡的な再生プランは、お陰様で「貴志川線の未来を“つくる”会」さんはじめとした地域住民と行政のご支援で無事乗り切ることができました。
2016年に始まった第2期は、82百万円の運行補助金もなく設備補助型自力再生ともいえる厳しい再生プランでしたが、初年度は奇跡的にわずかな黒字を出すことができました。
しかし、一昨年年は台風被害で15百万円の赤字、昨年は台風被害の復旧工事費に加え関空の貨物船衝突で海外インバウンド客の激減とグッズの売り上げ減、少子高齢化の通勤・通学客の減少によるボディブローに、新道路整備での顧客減少が加わって35百万円もの赤字と、2年間で何と50百万円の累積赤字です。
今年も赤字なら債務超過への対処が必要な心配が出てきました。
そこで起死回生とばかりに、貴志川線のキシにかけて「キシカイセイプロジェクト」を「たま大明神鎮座4年祭」に発表しました。今年一番という猛暑の日でしたが、炎天下にもかかわらず内外からの大勢のファンの皆さんに囲まれて、今日は「よんたま駅長」をメインに「ニタマ駅長」が付き添いとして式典でご挨拶しました。
プロジェクトの発表と、新作の可愛い「たま駅長」と「ニタマ駅長」のうちわの発売も開始しました。よんたま駅長は暑さの中を頑張って、最後にお客様へ「ニャー」と、立派に御礼挨拶を言ってくれ、みんな「可愛い~」と大喜びされていました。その後、たま大明神の鎮座するたま神社にお詣りをしてプロジェクトの成功を祈願しました。
そもそも和歌山電鐵は、90社あった地方鉄道のうち約7割の赤字鉄道の起死回生には両備グループが提唱するヨーロッパ型の「公設民営」しかないということで、地域の皆さんがお困りの南海電鉄貴志川線を引き継ぎ、和歌山電鐵貴志川線として2006年4月に再生を開始したものです。
年間5億円もの赤字路線に両備グループの経営のノウハウと公設に一部準じた方法での再生は、「貴志川線の未来を“つくる”会」や和歌山県や和歌山市、紀の川市の熱きご協力とご支援に加え水戸岡デザインの「いちご電車」「おもちゃ電車」「たま電車」「うめぼし電車」という楽しい電車達に神の救いと思われるスーパースター「たま駅長」の登場、そして社員のガンバリで一躍世界の和歌山電鐵として40百万円の基金を残して奇跡的な再生として10年間を乗り切りました。
10年後は、この和歌山電鐵の再生で生まれた国の「公有民営」のスキームで再生する予定でしたが、行政サイドからの「市民の危機意識が薄れる」との懸念から設備補助を前提に最も厳しい「運営費補助なし」の「準公設民営=設備補助型民営鉄道」として再出発しました。
当初から赤字覚悟を経営努力で乗り切るスキームは、サステナブルな地方鉄道の再生では無理だと分かってはいましたが、努力もせずにできないということはご理解いただけないので、敢えて「大きな問題が起これば再協議をお願いする」ということで再出発しました。
これまた「たま駅長」の後継の「ニタマ駅長」と「よんたま駅長」もたま大明神の叱咤激励でガンバリ、地域の皆さんのご協力もあって、運行補助金をいただかずに奇跡的に一年目は僅かな黒字で乗り切りました。
しかし、前述の大きな問題から、構造的な少子高齢化をインバウンドや観光客で補う再生スキームではサステナブルな発展を図ることは無理だと実証できたので「公有民営」に取り組まなければならない時期に来たと思っています。
今まで培った再生と経営のノウハウを駆使して鐵道再生だけでなく地域活性化と一体の第二の創業に取り組みますので、ぜひ引続き皆さんの熱き応援をお願いします!
なお、プロジェクトの目的・目標は以下のごとくです。
目 的:和歌山市と紀の川市を結ぶ公共交通である貴志川線の安定的な永続運行。
目 標:貴志川線や地域公共交通に関心を寄せていただき現状を正しく知っていただくとともに、社会インフラとして貴志川線が安定的に永続できるよう行政や地域の皆様、事業者が一体となり、主体的に活性化を図る取り組みを行うこと。また、貴志川線を通じ沿線地域の持続的発展に向けた基盤づくりを行うこと。
また、以下の事業を予定しています。(既に実施中のものを含む)
第1弾「迷探偵コンナンクイズラリー 貴志川線最大の危機を救え!」開催
・2019年7月20日(土)~9月1日(日)まで
第2弾「あと5回きっぷ」の発売
・2019年8月11日(日)から
・普通券5枚綴り、台紙に新聞風等の現状を伝えるメッセージ
第3弾「枕木オーナー」の募集
・緊急安全対策で約700本の木枕木の交換への支援募集
第4弾 登録有形文化財「伊太祈曽車庫」の観光資源化
・案内看板等の整備、見学ルートの回廊化による集客施設としての有効活用
・体験メニューの開発による滞在型観光の開発
・貴志川線関連資料等の展示スペースや休憩スペースの整備
第5弾 クラウドファンディングの活用
・「貴志川線を持続可能で安定的に永続すること」を目的とした施策に対する支援を募集
第6弾 副駅名称(命名権)、貴志川線サポーターの募集
・駅名称を含め、駅看板やHPへ企業名を掲出
第7弾 キャッシュレス決済への対応
・2次元バーコード(QRコード)決済の導入(8/11よりPayPay、Alipayを先行導入)
第8弾 四季の郷公園味覚ゾーンとの連携強化
・駅~公園間の2次交通の拡充
第9弾 観光いちご狩り事業への参入可能性を研究
・高い人気の観光いちご狩りの需要を取り込むため、協会と連携し貴志川線専用農園の可能性を研究
第10弾 三社参り周遊きっぷの開発
・認知度を高め、周りたくなる動機づくりに周遊乗車券を開発
・御朱印帳付き周遊きっぷ等
これらプロジェクトを多くのご協力をお願いしながら今期中に鋭意進めていきますのでよろしくお願いします。