和歌山電鐵株式会社
社長 小嶋光信
今日は、私たちの大切な仲間、二タマ駅長に別れを告げる日となりました。
二タマ駅長の食欲が落ちていると聞いたのは、10月下旬のことです。今年の貴志川線まつりから駅長のお仕事をお休みしてもらい、伊太祈曽駅の休憩室に会いに行きました。
抱き上げた瞬間、「あれ、ちょっと軽くなったかな」と感じましたが、目にはまだ、あの凛とした“駅長の光”が宿っていました。獣医さんからも「大きな病気はありませんよ」と言われており、安心していました。
しかし、願いは叶わず。11月20日。二タマ駅長は、本社のみんなに向かって、最後にひと声、「ニャー」と告げ、静かに天寿を全うしました。まるで「ありがとう。そろそろ行くニャ」と言うかのようでした。
思えば、たま駅長も就任10周年を目前にして旅立ちました。
二タマ駅長もまた、20周年を目前に。そして、長年の願いだった完全上下分離による公有民営化の実現を見届けるように、そっと旅立っていきました。本当に律義な駅長です。
二タマ駅長は、飼い主不明の子猫として保護され、三毛猫だったことから岡山電気軌道に迎えられました。そして、有名な「訓練しない訓練所」とも呼ばれる猫駅長訓練所に、1期生として入所しました。
適性検査は三つ。
ひとつ、人を嫌がらない。
ふたつ、帽子を嫌がらない。
みっつ、仕事を嫌がらない。
この三つの難関を、見事にクリアしました。
社長面接でも高い得点で、堂々たる成績。そして和歌山電鐵に転任し、たま駅長の後任として二代目駅長に就任したのです。
上司となったたま駅長は、普段は温厚ですが、後輩にはなかなか厳しく、「フーハー!」という指導に、二タマ駅長は「ニャーニャー」と言い訳しながらも、懸命に頑張っていました。その光景は、まるでどこにでもある職場の先輩と後輩のやりとりのようで、思わず笑みがこぼれました。やがて二タマ駅長は、その明るく可愛らしい姿でたくさんのお客様に愛され、駅長として、そして社長代理としての重責を、見事に果たしてくれました。
さらに和歌山市さんからは「和歌山市観光特別大使アゼリニャ」に任命され、また、インバウンド増加への功績が認められ、和歌山県さんからはたま駅長に続き「和歌山県勲功爵」を受章しました。
猫としては、まさに異例の大出世です。
日々のお勤めは本当に健気で、駅を訪れるお客様の心を癒し、私たちスタッフにも喜びと誇りを与えてくれました。
ここに深い感謝を捧げ、安らかな眠りを心よりお祈りいたします。
そして、これまで二タマ駅長へ温かい声援をしてくださった乗客の皆さん、今日もお手伝いしてくれた「貴志川線の未来をつくる会」の皆さん、和歌山県、和歌山市、紀の川市の知事、両市長はじめ行政の皆さんに感謝し、里親として温かく支えてくださった麻生専務取締役とご家族の皆さま、社員、同僚の猫駅長の皆様に心から敬意を表します。
ここで、二タマ駅長に最後の辞令をお伝えします。
辞令
社長代理・ウルトラ駅長 二タマ様
名誉特別駅長を命ず。
和歌山電鐵、そして世界中の地域公共交通をお守りください。
令和7年12月13日
和歌山電鐵株式会社
社長 小嶋光信
二タマ駅長。あなたは、和歌山電鐵の大きな転換点をしっかりと見届け、静かに旅立っていきました。
どうか天国で、たま駅長と並んで、これからの和歌山電鐵を、温かく見守っていてください。
本当に、ありがとうございました。


















