スーパー駅長たま執行役員に就任

和歌山電鐵 社長 小嶋 光信

あけましておめでとうございます!いよいよ両備グループも100周年です。その門出を祝う事始めの行事が、スーパー駅長たま様(和歌山県勲功爵なので“様”です)の駅長就任3周年を祝うとともに、この3カ年で目覚ましい業績を上げたことによる執行役員の就任式です。

思えば約4年前、開業日のまさに4月1日、それも開業式典が終了して伊太祈曽駅の本社に戻ろうとしていたその時に、たま様との運命的出会いがあったのです。駅の隣の小山商店の奥さんが、たま様の小屋をお店の隣の、町道にあたる公有地においていたのです。それが、まさかの偶然という他ないのですが、その日にたま様の小屋を貴志川町(現、紀の川市)から撤去するように命じられたのです。慌てた小山商店の奥さんは、帰ろうとする私の後ろから髪を振り乱して「社長さん、社長さん、大変です。たまが、たまが」と大声で呼び止めたのがきっかけです。両備グループの経営理念は忠恕=真心からの思いやりですから、聞いた以上は捨て置く訳にはいきません。

たま様と会って、目が合った瞬間に、この子は駅長だと思いました。人間の脳とは凄いものですね。瞬時に、「猫を何とか救ってあげたい」、「でも駅舎に動物を置くと世話に社員が嫌がるし、お客様も猫嫌いがいる」、「この駅は始終着駅だが、再生のコスト削減で無人駅で淋しい」等々が駆け巡り、咄嗟の問題解決が「たま様を駅長にする」ということでした。これなら八方丸く納まると小山商店の奥さんに提案すると、まさに春が来たように(その時は四月で春なのですが・・・)パッと明るい顔になって快諾いただいたのです。

びっくりしたのが3年前の就任式です。テレビ局が東京からも2局入って全部で6カメです。何とお客様も黒山の人だかりです。東京のテレビ局の女性のアナウンサーさんが各局を代表してインタビューされて、「猫の駅長にいったい何の駅長業務が出来るのですか」という質問をされたのです。これも咄嗟に「たま駅長の業務は客招きです」と招き猫のように右手をあげて答えました。お客様が少なくて困っていた鉄道の再生ですから、お客様が増えなくてはどうにも再生出来ないのです。これにはマスコミの皆さんもお客様もドッと大笑いになりました。

それからが駅長たま様の快進撃です。あっと言う間に全国の人気者になって、全国から鉄道や猫のマニアの方々や観光客の皆さんが和歌山電鉄に来てくださって、全国の地方鉄道再生のモデルになりました。“たまちゃんに会いに行こう”ツアーは日本のみならず、海外にまで広がり、台湾、中国や韓国からもお客様が来訪されます。その駅長ぶりは世界中に知れ渡り、ついにヨーロッパの映画会社が「働く猫」の代表として映画化されました。この夏に日本でも封切りになるようです。

関西大学の宮本教授が、就任1年目にたま様の経済効果を測定してくださったところ、なんと年間11億円というもの凄い社会貢献でした。もちろんたま様だけでなく、社員を始め貴志川線の未来をつくる会や行政のみなさんのご協力のお陰です。それだけでなく、スーパー駅長たま様は、愛玩動物とだけ思われ、テレビでも犬のコマーシャルで影が薄かった猫族の、「働く猫」としての復権を果たしたのです。最近は猫のコマーシャルへの登場が犬に肉薄しています。

これらの働きでたま様は、和歌山県仁坂知事から和歌山県勲功爵の称号を受けるまでになりました。たま様を助けてあげようと思ったら、逆にこちらが助けられ、まさに「たま様の恩返し」で全く「福招き猫」のたま様です。もちろん両備グループでも、和歌山電鉄のみならず、その親会社の岡山電気軌道とグループ全社を全国に名を知られる功績をあげてくれました。

ここに3周年を記念して執行役員に選任し、エグゼクティブ ステーションマスターを命じます。

一社員で入社して、1年で課長職、3年で役員就任は、もちろん両備グループ50社の出世レースのトップランナーです。執行役員の報酬は、本人からこれ以上食べるとますますメタボになると辞退されたので、就任のご褒美は、1億円の「たまステーション」としました。
ここに功績を称え、さらなる活躍を期待します。

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